下垂体転移による下垂体前葉機能低下症と尿崩症を生じた小細胞肺癌の1例
清水 崇弘a 原 丈介a 赤崎 恭太a 中野雄二郎b 木村 英晴a 笠原 寿郎a
a金沢大学附属病院呼吸器内科
b金沢大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学分野
症例は76歳男性.限局型小細胞肺癌(cT1aN2M0,Stage ⅢA)に対して,シスプラチン(cisplatin)とエトポシド(etoposide)の化学療法と胸部放射線照射の同時併用治療が開始されたが,化学療法中に嘔気と食欲不振が出現した.頭部造影MRIで下垂体腫瘍を,三者負荷試験で下垂体前葉機能の低下を認め,小細胞肺癌の下垂体転移による下垂体前葉機能低下症と診断された.経過で尿崩症も発症した.下垂体転移に対する全脳照射後も内分泌機能は改善しなかったが,ホルモン補充療法により嘔気と食欲不振は改善した.
Received 1 Jun 2021 / Accepted 24 Aug 2021
原 丈介
〒920–8641 石川県金沢市宝町13–1
金沢大学附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 10(6): 457-462, 2021