指尖転移をきたした肺扁平上皮癌の1例
池澤 靖元a 水柿 秀紀a 岡田 宏美b 大泉 聡史a 松野 吉宏b 西村 正治a
a北海道大学病院内科Ⅰ
b同 病理診断科
癌腫では四肢末端への転移はまれである.症状が指先の腫脹や疼痛のみの場合は他疾患として治療され,診断が遅れることもある.症例は79歳,男性.原発性肺扁平上皮癌cT3N3M0 stage IIIBでビノレルビン投与を計3コース施行.その後左中指爪床に皮膚剥離を認め,急速に増大する易出血性の腫瘍性変化を呈し,止血困難で左手中指中節骨で切断.病理学的には真皮内に主座を置く扁平上皮癌の所見で,原発性肺癌からの転移皮膚性腫瘍と診断された.手指の腫脹性病変の場合,悪性腫瘍に伴う可能性もあり留意する必要がある.
Received 2 Nov 2015 / Accepted 29 Mar 2016
連絡先:水柿 秀紀
〒060-8648 北海道札幌市北区15-7
北海道大学病院内科Ⅰ
日呼吸誌, 5(4): 189-193, 2016