脳幹膿瘍を合併したと考えられた肺ノカルジア症の1例
大西 真裕a 小林 哲a 都丸 敦史a 高橋 佳紀a 藤原研太郎a 浦和 昌史a 高木 健裕a 小林 裕康a ガバザ・エステバンb 田口 修a
a三重大学医学部附属病院呼吸器内科
b三重大学医学部免疫学
症例は64歳,女性.天疱瘡の診断でステロイド治療中であった.胸腺腫による腫瘍随伴性天疱瘡が疑われ,胸腺摘出術が予定されたが,術前評価にて肺野結節影を認め,手術は中止となる.感染症が疑われ,広域抗菌薬治療を開始した.次第に上肢感覚障害,複視,ふらつきの症状が出現し,頭部MRIにて脳幹膿瘍の診断に至った.喀痰培養検査から肺ノカルジア症と診断し,脳幹膿瘍もノカルジアによるものと判断した.ノカルジアを標的とした治療に変更し,改善に至った.脳幹部に膿瘍を合併すると,本例のように多彩な神経症状をきたし,場合によっては生命に影響する.若干の文献的考察を加え報告する.
Received 28 Aug 2013 / Accepted 12 Nov 2014
連絡先:大西 真裕
〒514-8507 三重県津市江戸橋2-174
三重大学医学部附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 4(2): 194-199, 2015