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書誌情報

特集 COPD の身体活動性をめぐるサイエンス

Topics 2 身体活動性と全身性炎症

木村  弘a 福岡 篤彦b 吉川 雅則a 

a奈良県立医科大学内科学第二講座
b吉野町国民健康保険吉野病院内科

要旨

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は長期の喫煙歴をもつ中高齢者に発症する肺の炎症性疾患であると同時に,種々の併存症を伴う全身性疾患として認識されている.全身性炎症(systemic inflammation)がCOPDの全身併存症をもたらす基盤病態であることも明らかにされている.呼吸困難に伴う身体活動性の低下(physical inactivity:PI)は生活の質の低下に直結する.近年,PIはCOPDの最も重要な予後因子であることが明らかにされ,身体活動性の臨床的意義に注目が集まっている.一般的にPIは全身性炎症を惹起することが示唆されており,COPDにおいても全身併存症の発症機序としてPIの関与も考慮する必要がある.PIはサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の増悪要因の一つであり,サルコペニアの進行はPIをさらに増悪させるという悪循環が成立している.サルコペニアは抑うつ,骨粗しょう症,糖尿病,心血管疾患などの併存症の発症とも密接に関連している.身体活動性の向上は全身性炎症や全身併存症の発症抑制にもつながると考えられる.日本呼吸器学会のガイドラインにおいても身体活動性の向上が治療戦略の中に盛り込まれており,今後さらなる検討が必要である.

キーワード

慢性閉塞性肺疾患 全身併存症 全身性炎症 身体活動性 

連絡先:木村 弘
〒634-8522 奈良県橿原市四条町840
奈良県立医科大学内科学第二講座

日呼吸誌, 4(1): 15-22, 2015

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