60歳代で発症したprimary ciliary dyskinesiaの1例
中本啓太郎a,b 高柳 昇a 河手絵理子a 太田 池恵a 柳澤 勉a 杉田 裕a
a埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
b杏林大学医学部呼吸器内科
症例は62歳,女性.咳嗽,喀痰,胸部異常陰影の精査目的に来院した.来院時症状は消失していたが胸部CTで気管支壁の肥厚や小葉中心性の粒状影,左下葉の結節を認めたため経過観察を行った.その後気管支炎や市中肺炎に罹患したことから,気道感染を繰り返す疾患の鑑別として原発性線毛機能不全症(primary ciliary dyskinesia:PCD)をあげ,気管支鏡を施行した.電子顕微鏡で線毛の構造異常を認めPCDと診断した.PCDは慢性上・下気道感染症などの症状を呈することが多いが,本症例のように症状が軽微なものもあるため,感冒と思われるような症例でもPCDを鑑別診断に考慮する必要がある.
Received 4 Jun 2013 / Accepted 8 Aug 2013
連絡先:中本 啓太郎
〒360-0105 埼玉県熊谷市板井1696
埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
日呼吸誌, 2(6): 841-845, 2013