胸部大動脈弓部に発生した内膜肉腫の1剖検例
吉川 裕喜a,b 石井 寛a,c 仲間 薫b 横山 敦a,b 串間 尚子a 門田 淳一a
a大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座
b国立病院機構大分医療センター呼吸器内科
c福岡大学病院呼吸器内科
症例は70歳,男性.2010年に脳腫瘍摘出術を受け,2011年に大動脈弓に接する腫瘤が発見された.多発性の転移性病変がみられたため緩和ケアを行った.剖検所見では,大動脈弓部に白色調で硬い腫瘍塊が形成され,左総頸動脈と鎖骨下動脈を巻き込んでいた.大動脈弓部の内膜は紡錘型の肉腫細胞で置換されており,既存の血管内皮を置換しながら進展していた.病理学的に内膜肉腫と診断し,肝臓,脾臓,脳,骨に転移を認めた.胸部画像所見で大血管に接した腫瘤を認めた場合,まれではあるが血管内膜肉腫を鑑別に挙げる必要がある.
Received 15 Mar 2013 / Accepted 4 Jun 2013
連絡先:吉川 裕喜
〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1
大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座
日呼吸誌, 2(5): 641-645, 2013