意図せぬ再投与で再燃したクロルプロマジンによる薬剤性肺障害の1例
鈴木亜衣香 坂本 晋 磯部 和順 岩田 基秀 高井雄二郎 本間 栄
東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
症例は57歳,男性.1979年から統合失調症で東邦大学医療センター大森病院精神科に通院中であり,症状に合わせて内服を自己調節していた.2010年11月に肺炎・細気管支炎の診断で入院した.ピペラシリン/タゾバクタム,シプロキサシン,プレドニゾロン30 mg/日を投与したが反応に乏しかった.画像上のすりガラス陰影(ground glass opacity),KL-6高値などから薬剤性肺炎を疑い,原因薬剤と考えられたレボメプロマジン,クロルプロマジンの内服を中止,プレドニゾロンを50 mg/日に増量したところ改善した.しかし,意図せず精神科によりクロルプロマジンが再投与された後から再び発熱,画像所見の増悪を認め,クロルプロマジンによる薬剤性肺障害と診断した.クロルプロマジン中止のみでこれらの所見は改善した.その後,プレドニゾロンを漸減し第41病日に15 mg/日とし退院した.フェノチアジン系薬剤による薬剤性肺障害はきわめてまれであり報告する.
薬剤性肺障害 クロルプロマジン レボメプロマジン フェノチアジン
Received 30 May 2012 / Accepted 20 Sep 2012
連絡先:鈴木 亜衣香
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1
東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
日呼吸誌, 2(3): 223-227, 2013