特発性間質性肺炎に対しステロイドおよび免疫抑制剤投与中に発症したde novo B型肝炎の1例
田中 徹 角田 義弥 林 士元 谷田貝洋平 関根 朗雅 斎藤 武文
国立病院機構茨城東病院内科診療部呼吸器内科
症例は56歳,男性.胸部異常陰影精査目的に国立病院機構茨城東病院を受診.線維性非特異性間質性肺炎(fibrotic non-specific interstitial pneumonia:f-NSIP)の診断のもと,ステロイドパルス療法を施行後に,プレドニゾロン(prednisolone)およびシクロスポリン(cyclosporin)による免疫抑制療法を開始した.治療開始前の血清HBs抗原,HBs抗体,B型肝炎ウイルス(HBV)-DNAはいずれも陰性であったが,HBc抗体は測定しなかった.免疫抑制療法開始3ヶ月後に肝機能障害が出現し,再度測定したHBs抗原およびHBV-DNAの陽転化から,HBV再活性化によるde novo B型肝炎と診断した.治療抵抗性であり,最終的に死亡した.de novo B型肝炎はリツキシマブ(rituximab)や造血幹細胞移植などの宿主免疫を強力に抑制する治療による発症例の報告が多く,特発性間質性肺炎に対する通常の免疫抑制療法により発症した報告はない.本症例からは,特発性間質性肺炎に対する免疫抑制療法においてもde novo B型肝炎を発症し,予後も不良である可能性が示唆された.免疫抑制療法の開始時はHBs抗原のみでなくHBc抗体およびHBs抗体を測定し,HBs抗原陰性のHBV感染既往例を見逃さないことが望まれる.
特発性間質性肺炎 HBV感染既往 HBV再活性化 de novo B型肝炎
Received 20 Feb 2012 / Accepted 9 May 2012
連絡先:田中 徹
〒319-1113 茨城県那珂郡東海村照沼825
国立病院機構茨城東病院内科診療部呼吸器内科
日呼吸誌, 1(7): 599-603, 2012