デクスメデトミジンによる鎮静下の非侵襲的陽圧換気療法が奏効した慢性閉塞性肺疾患増悪の1例
金本 幸司 増田美智子 中澤 健介 松野 洋輔 飯島 弘晃 石川 博一
筑波メディカルセンター病院呼吸器内科
症例は70歳,男性.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪,肺炎,心不全のため入院.5 L/min酸素下でPaO2 94.7 Torr,PaCO2 78.0 Torr,pH 7.226の呼吸性アシドーシス,CO2ナルコーシスを認めた.非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)開始直後から興奮により治療継続が困難となったが,デクスメデトミジン(dexmedetomidine)の投与により呼吸抑制を認めず良好な鎮静効果を得て,NPPV管理に成功した.一般にNPPV療法下のCOPD例に対する鎮静薬の使用は呼吸抑制の危険を伴う.デクスメデトミジンには呼吸抑制作用が少ない特徴があり,興奮やせん妄によりNPPV療法に非協力的となったCOPDの増悪例に使用する鎮静薬として,有用な可能性がある.
慢性閉塞性肺疾患の増悪 非侵襲的陽圧換気 デクスメデトミジン 鎮静 興奮
Received 8 Mar 2012 / Accepted 6 Jun 2012
連絡先:金本 幸司
〒305-8558 茨城県つくば市天久保1-3-1
筑波メディカルセンター病院呼吸器内科
日呼吸誌, 2(1): 34-38, 2013