炎症性胸膜肥厚との鑑別に苦慮した悪性胸膜中皮腫の1例
島津 哲子a 吉田 憲生b 松井 彰b 岩田 勝b 山田 健c 長谷川好規a
a名古屋大学大学院医学研究科呼吸器内科
b刈谷豊田総合病院呼吸器・アレルギー内科
c同 呼吸器外科
症例は53歳,男性.アスベストの職業的曝露歴はなし.2010年3月,健診で右肋骨横隔膜角の鈍化を指摘され,精査目的で刈谷豊田総合病院呼吸器内科受診となった.胸部computed tomography(CT)では胸膜の肥厚のみの所見で,positron-emission tomography with 18F-fluorodeoxyglucose(FDG-PET)では胸膜に淡い集積を認めた.炎症性(非腫瘍性)胸膜肥厚も考えられたが,悪性の可能性も否定できず,最終的に外科的胸腔鏡下胸膜生検により悪性胸膜中皮腫と診断した.治療は,右胸膜肺全摘術後にシスプラチン(cisplatin:CDDP)+ペメトレキセド(pemetrexed:PEM)にて化学療法を施行した.悪性胸膜中皮腫の画像所見において,胸膜肥厚のみで胸水を認めず,またFDG-PETの集積が軽度の場合には,炎症性胸膜肥厚との鑑別に苦慮することがある.良性疾患と悪性疾患の鑑別が困難な場合,積極的な外科的胸膜生検を検討する必要があると考えられた.
悪性胸膜中皮腫 炎症性胸膜肥厚 FDG-PET 外科的胸膜生検
Received 2 Sep 2011 / Accepted 3 Jul 2012
連絡先:島津 哲子
〒446-0064 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
名古屋大学大学院医学研究科呼吸器内科
日呼吸誌, 2(1): 3-7, 2013