好酸球増多症と末梢神経障害を伴ったびまん性肺動静脈奇形の1例
吉田 秀一a,b 佐山 宏一a 滝原 崇久a 橋本 統c 杉浦 弘明c 小崎健次郎d 林 雄一郎e 浅野浩一郎a
a慶應義塾大学医学部呼吸器内科
b独立行政法人国立病院機構東京医療センター呼吸器科
c慶應義塾大学医学部放射線診断科
d同 小児科
e同 病理学教室
40歳男性.脳膿瘍を発症し,その際に低酸素血症を認めたため呼吸器内科を受診した.胸腹部CTで両肺野に多発性の肺動静脈奇形を認め,肝臓にも肝動脈門脈シャントの存在が疑われた.また皮膚には多発する類上皮血管腫を認めた.endoglin(ENG)遺伝子およびactivin A receptor type II-like kinase 1(ACVRL1別名ALK1)遺伝子には変異を認めず,遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断には至らなかった.右心カテーテル下で右肺6ヶ所,左肺5ヶ所にコイル塞栓術を行ったが,シャント率の改善は認めなかった.また同時期より両下肢のしびれと,末梢血好酸球や血清IgE値の増加,血清MPO-ANCA値異常高値が出現したが,ステロイドの投与により改善した.本例のように全身の血管奇形に好酸球増多症と末梢神経障害を伴った症例はこれまで報告されておらず,きわめてまれな症例であり報告した.
Received 31 Mar 2011 / Accepted 16 Dec 2011
連絡先:吉田 秀一
〒152-8902 東京都目黒区東が丘2-5-1
慶應義塾大学医学部呼吸器内科
日呼吸誌, 1(4): 322-326, 2012