肉腫型悪性胸膜中皮腫の術後1年後に上皮型悪性胸膜中皮腫が顕在化した1例
吉井 肇a 松尾 潔a 藤原 慶一a 米井 敏郎a 佐藤 利雄a 山鳥 一郎b 安藤 陽夫c
a国立病院機構岡山医療センター呼吸器科
b同 臨床検査科
c同 呼吸器外科
症例は69歳の男性.2008年9月,左胸痛,労作時の息切れのために近医を受診し,左胸水を指摘され当センター呼吸器科に紹介となった.胸部CTにて左胸水とともに左横隔膜上に造影効果に乏しい8 cm超の腫瘤を認めた.MRIではT1で低信号,T2で高信号を呈した.胸腔鏡下に左横隔膜上の腫瘤と壁側胸膜上の結節を切除した.複数の病理医により免疫組織化学的手法を用いて切除病変を検討したが,確定診断には至らなかった.約1年後に同側の胸腔内に胸膜の肥厚像が出現し急速な増大傾向を認め,胸腔鏡下に胸膜生検を施行した.その病理像は上皮型中皮腫であった.術後,cisplatin+pemetrexedによる化学療法を施行した.最初に摘出した腫瘍との異同が問題となり,免疫組織化学染色の詳細な再検討により,最初の腫瘍は肉腫型中皮腫との診断に至った.本症例は中皮腫の手術後,短期間に異なる組織型の中皮腫が同側胸腔内に顕在化しており,このような症例の報告は過去にはなく,中皮腫の進展,診断を考えるうえで貴重な症例と考えられた.
肉腫型悪性胸膜中皮腫 上皮型悪性胸膜中皮腫 胸腔鏡下手術 免疫組織化学染色
Received 18 Mar 2011 / Accepted 6 Jan 2012
連絡先:松尾 潔
〒701-1192 岡山市北区田益1711-1
国立病院機構岡山医療センター呼吸器科
日呼吸誌, 1(4): 315-321, 2012