被災したエノキダケ栽培工場の復旧ボランティアに集団発生したorganic dust toxic syndromeの臨床的検討
a信楽園病院呼吸器内科
b新潟県立小出病院内科
c新潟県立中央病院呼吸器内科
2004年新潟県中越地震により被災したエノキダケ栽培工場の復旧ボランティアが,作業後にインフルエンザ様の発熱症状により相次いで医療機関を受診する事例を経験した.22名中21名のボランティアに実施したアンケートから,発熱(85.7%),全身倦怠感(71.4%),咳嗽(76.2%)などの症状が,平均8.7±5.9時間後から20名に発症していたことが判明した.環境調査を行ったところ,作業現場は異常繁殖した真菌が大量に空気中を舞っており,その培養検査にてAspergillus fumigatusが同定された.医療機関を受診した患者2名の気道由来検体からも同菌が証明された.侵襲性肺アスペルギルス症を発症した1名を除き,すべての症例が抗真菌薬やステロイドの使用なしで自然軽快した.以上より,本例は真菌を含んだ大量の有機粉塵を吸入したことによるorganic dust toxic syndrome(ODTS)集団発生事例と考えられた.ODTS 10例でβ-D-グルカンが測定され,6例がカットオフ値以上を示し,ODTS例における診断補助としての可能性が初めて確認された.
Organic dust toxic syndrome 震災 ボランティア β-D-glucan Aspergillus fumigatus
Received 25 Oct 2011 / Accepted 1 Feb 2012
連絡先:川崎 聡
〒950-2087 新潟市西区新通南3-3-11
信楽園病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(4): 287-293, 2012