
慢性腎不全に対して人工透析を行った肺胞微石症の1例
仁多 寅彦a 冨島 裕a 堀之内秀仁a 嶋崎久美子b 瀧 史香b 西村 直樹a 宮澤 仁志c 萩原 弘一c 蝶名林直彦a
a聖路加国際病院呼吸器内科
b同 腎臓内科
c埼玉医科大学呼吸器内科
症例は53歳,男性.両親がいとこ婚.健康診断で胸部単純写真の異常を指摘され画像所見より肺胞微石症と診断された.幼少時より健康診断にて胸部異常陰影を指摘されていたが無症状であった.小児期の健康診断時の胸部単純写真(6歳,13歳)でも肺胞微石症に特徴的な所見が確認できた.妹は無症状だが,胸部単純写真の所見は肺胞微石症に合致する所見を認めた.初診時に軽度の労作時呼吸困難を認めており,その後呼吸不全が進行し,54歳時に在宅酸素吸入,在宅人工呼吸管理を開始したが56歳時に呼吸不全のため死亡した.遺伝子検査にてSLC34A2の遺伝子変異が確認され,剖検にて肺胞内に層状構造からなる微石が確認された.高血圧症による腎機能障害のため54歳時より血液透析を開始し,55歳時より腹膜透析を行った.本症例は肺胞微石症患者に透析を施行した初めての報告であるが,透析は肺胞微石症の進行に影響を与えなかった.幼少時の画像を確認できた点も貴重であると考え,今回報告する.
Received 28 Sep 2011 / Accepted 30 Nov 2011
連絡先:仁多 寅彦
〒104-8560 東京都中央区明石町9-1
聖路加国際病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(3): 267-272, 2012