
インフルエンザウイルスA/H1N1 2009肺炎の1剖検症例
川島 彬子a 平間 崇a 西原 冬実a 嶺崎 祥平a 萩原 弘一a 清水 禎彦b 金澤 實a
a埼玉医科大学呼吸器内科
b埼玉県立循環器・呼吸器病センター病理診断科
新型インフルエンザ肺炎による剖検症例を経験し,ウイルス感染の局在を検討したので報告する.症例は58歳,男性,施設入所者.受診3日前より発熱を認め,受診時にはすでに新型インフルエンザ肺炎を発症していた.抗インフルエンザ薬と抗菌薬を速やかに開始したが第3病日に死亡,病理解剖を実施した.肺擦過検体からインフルエンザウイルスA/H1N1 2009が検出され,病理検査で気管支上皮,気管支腺と肺胞上皮にインフルエンザウイルスA型の感染を確認した.2010/2011シーズンでは,新型インフルエンザは季節性インフルエンザと同じような流行パターンを呈し,厚生労働省は新型と季節性を一括して扱うよう公示した.しかし,両者間には本症例のような感染の局在など相違点も存在する.両者を一括して取り扱ってよいかどうか,さらなる見極めが必要と思われる.
インフルエンザウイルスA/H1N1 2009 rRT-PCR
Received 8 Jun 2011 / Accepted 9 Sep 2011
連絡先:平間 崇
〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
埼玉医科大学呼吸器内科
日呼吸誌, 1(1): 56-61, 2012