胸膜癒着術中に脳空気塞栓症が生じた悪性胸膜中皮腫の1症例
田中 智a 佐藤 拓真b 横田 健斗a 山本 傑a 上野 清伸a
a大阪急性期・総合医療センター呼吸器内科
b同 脳神経内科
症例は78歳男性.20XX年7月右大量胸水の精査・加療目的に緊急入院となり,悪性胸膜中皮腫と診断した.タルクによる胸膜癒着術を2回施行したが,胸水コントロールは不良であった.癒着剤をシスプラチン(cisplatin:CDDP)に変更し胸膜癒着術を施行したが,CDDPの胸腔内注入中に突然意識障害が生じた.頭部CTにて左頭頂葉に広範な空気像を認め,脳空気塞栓症と診断した.神経症状は軽快したが,第73病日に悪性胸膜中皮腫の病勢悪化により死亡した.胸膜癒着術により脳空気塞栓症が生じ得ることを念頭に置く必要がある.
Received 22 Nov 2022 / Accepted 6 Jan 2023
田中 智
〒558–8558 大阪府大阪市住吉区万代東3–1–56
大阪急性期・総合医療センター呼吸器内科
日呼吸誌, 12(2): 98-101, 2023