移植片対宿主病の肺病変と鑑別を要し,抗体検査で診断しえたCOVID-19の1例
森尾 瞭介a 髙園 貴弘a,b 芦澤 信之a,c 山本 和子a 泉川 公一b,c 迎 寛a
a長崎大学病院呼吸器内科
b長崎大学大学院医歯薬学総合研究科臨床感染症学分野
c長崎大学病院感染制御教育センター
症例は64歳男性.急性骨髄性白血病に対して同種造血幹細胞移植を実施し,寛解後,消化管,皮膚移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)の治療を受けていた.呼吸困難を自覚し胸部CTで両肺中下葉にすりガラス影を認めた.SARS-CoV-2抗原検査,鼻咽頭ぬぐい液のPCR検査はともに陰性であり,GVHDによる器質化肺炎を考えたが,SARS-CoV-2 N抗体検査が陽性と判明し,COVID-19と臨床診断した.間質性肺炎の一部ではCOVID-19は画像上鑑別が困難なこともあり,発症から一定期間経過したCOVID-19症例において,SARS-CoV-2 N抗体検査は有用となる.
同種造血幹細胞移植 移植片対宿主病 新型コロナウイルス感染症 新型コロナウイルス SARS-CoV-2 N抗体検査
Received 31 Jan 2022 / Accepted 6 Jun 2022
髙園 貴弘
〒852–8501 長崎県長崎市坂本1–7–1
a長崎大学病院呼吸器内科
b長崎大学大学院医歯薬学総合研究科臨床感染症学分野
日呼吸誌, 11(5): 296-300, 2022