
イヌ回虫幼虫移行症との重複感染が疑われたウェステルマン肺吸虫症の1例
石渡 庸夫a 林 光恵b 露木 俊a 鈴木 崇文a 千葉佐保子a 宮崎 泰成b
a国家公務員共済組合連合会九段坂病院内科
b国立大学法人東京医科歯科大学呼吸器内科
症例は45歳女性,タイ人.3ヶ月続く咳嗽,上腹部から右側胸部の疼痛を主訴に受診.胸部CTで左胸水貯留,右S6の小結節影と左S4の索状影,末梢血好酸球増多と血清IgE高値を認めた.問診でサワガニの半生食歴と豚レバーの生食歴が確認された.寒天ゲル内二重拡散法で患者血清とウェステルマン肺吸虫の間に最も強い沈降線,イヌ回虫の間にも強い沈降線を認め,これらの重複感染が疑われた.ウェステルマン肺吸虫が感染の主体と診断,プラジカンテル(praziquantel)の治療が著効した.食習慣の違いにより生じる感染症に留意することが重要である.
Received 26 Apr 2021 / Accepted 18 Jun 2021
石渡 庸夫
〒102–0074 東京都千代田区九段南1–6–12
国家公務員共済組合連合会九段坂病院内科
日呼吸誌, 10(5): 393-397, 2021