人工呼吸管理中にヘパリン起因性血小板減少症を発症した新型コロナウイルス感染症の1例
石黒 卓 高野 賢治 西田 隆 中島 裕美 柴田 駿 高柳 昇
埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
症例は糖尿病に罹患した67歳男性.新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)に合併した肺炎のため,初発症状から17日目に人工呼吸管理を要した.未分画ヘパリン(heparin)が使用され始めた10日目に血小板減少を認め,ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)抗体が陽性であった.超音波検査で左大腿静脈に血栓を認め,ヘパリンの中止と,エドキサバン(edoxaban)の投与により軽快した.COVID-19の重症例では抗凝固療法が推奨されているが,COVID-19でHITを発症しやすい可能性が指摘されているため,頻回に血小板数を測定するなど注意が必要である.
新型コロナウイルス感染症 ヘパリン起因性血小板減少症 抗凝固療法 重症例 新型コロナウイルス
Received 18 Mar 2021 / Accepted 31 May 2021
連絡先:石黒 卓
〒360–0197 埼玉県熊谷市板井1696
埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
日呼吸誌, 10(5): 383-387, 2021