多剤併用療法で改善を得たAspergillus tubingensisによる慢性進行性肺アスペルギルス症の1例
橋本 恒a 小泉 晴美b 金子 彩美c 藤井 裕明b 亀井 克彦d 金子 猛a
a横浜市立大学大学院医学研究科呼吸器病学教室
b国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院呼吸器内科
c横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター
d千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野
67歳男性.発熱で受診し,CTで右肺上葉に浸潤影を認め,抗菌化学療法を行ったが,改善に乏しかった.気管支洗浄液でAspergillus nigerを検出し,慢性進行性肺アスペルギルス症と診断した.ボリコナゾール(voriconazole:VRCZ)で改善せず,リポソーマル アムホテリシンB(liposomal amphotericin B:L-AMB)へ変更,ミカファンギン(micafungin:MCFG)も併用したものの治療に難渋した.菌種の同定を専門施設に依頼し,A. tubingensisと同定された.感受性検査の結果を基に,L-AMB,カスポファンギン(caspofungin:CPFG),フルシトシン(flucytosine:5-FC)の3剤併用療法で約3ヶ月間の治療を継続し改善を得た.治療に難渋する肺アスペルギルス症では薬剤感受性検査は有用な手段となり得る.
慢性進行性肺アスペルギルス症 併用療法 Aspergillus tubingensis Aspergillus niger
Received 17 Jul 2020 / Accepted 30 Nov 2020
橋本 恒
〒236–0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3–9
横浜市立大学大学院医学研究科呼吸器病学教室
日呼吸誌, 10(2): 158-162, 2021