肺癌腫瘍内部にMycobacterium abscessusが感染した1剖検例
関谷 宗之a 一色 琢磨a 佐野 剛a 定本 聡太b 澁谷 和俊b 本間 栄c
a東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
b同 病理診断科
c東邦大学医学部びまん性肺疾患研究先端統合講座
症例は68歳男性.原発性肺癌の診断で化学療法を施行中に左気胸とMycobacterium abscessus complexによる胸膜炎を認めた.クラリスロマイシン(clarithromycin:CAM),アミカシン(amikacin:AMK),イミペネム/シラスタチン(imipenem/cilastatin:IPM/CS)による治療で一時的に改善を認めたが,その後同菌による肺感染の再増悪を認め死亡した.剖検所見で,腫瘍内部と胸腔内肺外結節部に肉芽腫性病変の形成と抗酸菌の存在を確認した.腫瘍内部に同菌が感染し,気胸を契機に胸腔内に穿破した症例は稀であると考え,考察を加えて報告する.
非結核性抗酸菌症(NTM症) Mycobacterium abscessus complex 肺癌 胸膜炎
Received 14 May 2020 / Accepted 20 Aug 2020
関谷 宗之
〒143–8541 東京都大田区大森西6–11–1
東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科
日呼吸誌, 9(6): 444-448, 2020