家族内発生した肺トキソカラ症の2例
村本 啓a,b 中村 和芳a 岡本真一郎a 一安 秀範a 伊藤 清隆c 興梠 博次a
a熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
b八代市立椎原診療所
c熊本労災病院呼吸器内科
症例は家族内発生例である.症例1は75歳,女性.膿胸の治癒過程で末梢血好酸球著増と血清総IgE高値,胸部CTで移動性結節影を認めた.イヌの飼育歴とシカ肉の生食歴を有し,血中抗イヌ回虫IgG抗体価高値から肺トキソカラ(Tc)症を疑った.症例2は76歳,症例1の夫.無症状だが妻と同様の生活歴.胸部CTの移動性結節影と血中抗イヌ回虫IgG抗体価高値から肺Tc症を疑った.いずれも複数の抗寄生虫薬で加療し,胸部陰影が消失したため肺Tc症と診断し治療終了した.Tc症患者は同じ生活歴の家族も精査を考慮すべきである.
Received 3 Apr 2018 / Accepted 27 Jun 2018
興梠 博次
〒860–8556 熊本県熊本市中央区本荘1–1–1
熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 7(5): 352-356, 2018