肺の組織破壊および喀血をきたした縦隔内膵仮性嚢胞の1例
須藤 悠太a,b 齋藤 淳a,b 上村幸二朗a,b 吉川 匠a,b 高橋 弘毅a 北田 順也b
a札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座
b旭川赤十字病院呼吸器内科
症例は35歳,男性.アルコール性急性膵炎を繰り返し近医に通院していたが,喀血と両側胸水を認め,当科入院.胸部造影CTで右下葉にすりガラス陰影を伴う気腫性変化と膵臓から縦隔に達する嚢胞を認めた.縦隔内膵仮性嚢胞により膵気管支瘻を形成し,膵酵素作用により肺組織の破壊が起こり,喀血が起きたと考えられた.慢性膵炎の合併症に縦隔内膵仮性嚢胞があり,膵性胸水が生じることは知られているが,喀血をきたした症例の報告は乏しく,肺組織を破壊し気腫性変化を認めた症例の報告はなかった.貴重な1例と思われ考察を加えて報告する.
縦隔内膵仮性嚢胞 喀血 肺の組織破壊 膵性胸水 エラスターゼ
Received 30 Oct 2016 / Accepted 27 Dec 2016
連絡先:須藤 悠太
〒060-8543 北海道札幌市中央区南1条西16丁目291
札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座
日呼吸誌, 6(3): 210-214, 2017