タイヤ製造によるアスベスト関連胸膜肺疾患に続発し,急速な経過を呈した肺癌の1例
上尾中央総合病院呼吸器内科
症例は76歳,男性.60歳までタイヤ製造に従事.胸部異常陰影で受診.画像的にアスベスト関連胸膜肺疾患と診断した.単純CTで経過観察中,右肺底部結節影が出現し,PETでcT1bN0M0相当と診断された.右下葉切除により扁平上皮癌,pT3N1M0の診断された.2ヶ月後,多発骨転移,多発肝転移が出現し,死亡した.肺癌が疑われてからの全経過は9ヶ月であった.剖検にて広範な胸膜プラーク,肺線維症が確認された.タイヤ製造によるアスベスト関連胸膜肺疾患はまれであり,アスベスト関連疾患に対する経過観察のあり方を考えさせられた.
アスベスト関連胸膜肺疾患 タイヤ製造 胸膜プラーク アスベスト小体 肺癌
Received 2 Feb 2016 / Accepted 11 Jul 2016
連絡先:鈴木 直仁
〒362-8588 埼玉県上尾市柏座1-10-10
上尾中央総合病院呼吸器内科
日呼吸誌, 5(6): 316-320, 2016