アスベスト曝露後に発症した原発性滲出性リンパ腫類似リンパ腫の1例
穴澤 梨江a,b 河野 正和b 酒井 俊彦b 塩野さおりc 戸島 洋一b
a千葉大学医学部附属病院呼吸器内科
b東京労災病院呼吸器内科
c同 病理科
症例は76歳の男性.建築現場の作業でアスベスト曝露歴があった.経過観察中に胸水増加を認め,胸水および胸腔鏡検査の結果から腫瘤形成を伴わず胸水・胸膜に限局したびまん性大細胞型B細胞悪性リンパ腫と判明した.免疫染色でHHV-8は陰性だった.体液腔のみで増殖する原発性滲出性リンパ腫(PEL)に類似するが,免疫不全を伴わずHHV-8陰性の症例は原発性滲出性リンパ腫類似リンパ腫(PEL-LL)と解釈されている.本症例はPEL-LLに該当し,アスベストによる慢性胸膜炎が悪性リンパ腫の発症に影響を与えたと考えられる.
Received 31 Jan 2016 / Accepted 12 May 2016
連絡先:穴澤 梨江
〒260-0856 千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
千葉大学医学部附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 5(5): 269-273, 2016