気道上皮プロテアーゼによるインフルエンザウイルスの活性化―治療への応用の可能性―
山谷 睦雄a 籏智 幸政b 下平 義隆c 本間 守男d 西村 秀一d
a東北大学大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座
b神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科兼腫瘍内科
c山形大学医学部感染症学講座
d仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター
インフルエンザウイルスのエンベロープに存在するヘマグルチニンは,気道上皮細胞に発現する膜貫通結合型セリンプロテアーゼの作用で開裂を受けて活性化され,ウイルスRNAの細胞質内進入を促進し,ウイルス増殖に関与する.ウイルスの増殖と炎症性サイトカインの放出は発熱などの症状や重症化,慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息の増悪に関与する.セリンプロテアーゼ阻害薬はウイルスの増殖と炎症性サイトカインの放出を抑制するため,インフルエンザの治療薬の開発を目標に研究が進められている.近年明らかにされてきた知見を紹介する.
セリンプロテアーゼ インフルエンザウイルス 気道上皮細胞 気道炎症
Received 19 Feb 2016 / Accepted 16 Mar 2016
連絡先:山谷 睦雄
〒980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町2-1
東北大学大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座
日呼吸誌, 5(4): 172-183, 2016