血清IgG4高値と限局性肉芽腫性血管炎を合併し診断に苦慮した炎症性縦隔腫瘤の1例
野村 基子a 渡辺 恭孝a 遠藤 俊輔b 野首 光弘c 河端 美則d 小山信一郎a
a自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器科
b同 呼吸器外科
c同 病理部
d埼玉県立循環器・呼吸器病センター病理診断科
症例は67歳,男性.呼吸困難と嗄声を主訴に来院.胸部単純および造影CTで上縦隔に腫瘤を認めた.診断目的の縦隔腫瘤生検では,IgG4陽性形質細胞浸潤と細静脈を侵す縦隔炎・隣接する肺の壊死性肉芽腫性血管炎を認めた.血清IgG4の上昇があり,IgG4関連縦隔炎の疑いでステロイド治療を開始し,臨床症状および画像所見の著明な改善を得た.IgG4関連縦隔炎は線維性縦隔炎や多発血管炎性肉芽腫症との鑑別が重要で,これらの疾患においてもIgG4陽性細胞の浸潤が報告されている.本症例は病理学的にも鑑別に苦慮した貴重な症例と考えた.
Received 23 Jul 2015 / Accepted 1 Oct 2015
連絡先:渡辺 恭孝
〒330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1-847
自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器科
日呼吸誌, 5(1): 23-27, 2016