Trousseau症候群を合併した左上葉肺扁平上皮癌の1例
熊本地域医療センター呼吸器内科
症例は84歳,男性.左上葉肺扁平上皮癌(cT1bN3M1a),EGFR遺伝子変異陰性の診断で抗癌剤治療が計画されたが,突然の右片麻痺を発症した.頭部MRIで多発性の亜急性脳梗塞が観察され,他の過凝固状態を示す危険因子は観察されなかったものの,抗凝固療法開始後も多発脳梗塞の増悪が認められた.肺扁平上皮癌にTrousseau症候群を合併した症例と診断して経口抗癌剤による追加治療を開始したが,誤嚥性肺炎を併発して入院22日目に死亡退院となった.肺扁平上皮癌に発症したTrousseau症候群はまれな症例であり報告する.
Received 6 Jun 2015 / Accepted 24 Sep 2015
連絡先:柏原 光介
〒860-0811 熊本県熊本市中央区本荘5-16-10
熊本地域医療センター呼吸器内科
日呼吸誌, 5(1): 3-7, 2016