Topics 6 ミオカインと骨格筋のバイオロジー
東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野/医学系研究科運動学分野
ミオカインは,筋収縮に伴い骨格筋から放出されるサイトカインである.運動中のヒトの動静脈カテーテルから採取した血液サンプルの動静脈較差分析から最初にミオカインとして同定されたのがinterleukin-6(IL-6)である.最近のヒト筋細胞のセクレトーム分析からは,300種類以上のミオカイン候補が同定されている.すでに同定されているミオカインの役割は多様であり,代謝調節,抗炎症作用,損傷再生時の骨格筋量の調節など広範にわたっている.IL-6,ミオネクチン,イリシン,SPARC(secreted protein acidic and rich in cysteine),デコリン,アディポネクチンなどが最近注目されているミオカインである.筋力トレーニングにおける骨格筋適応時のミオカインの役割を紹介する.ほとんどのミオカインは骨格筋以外でも産生され,さらにそれらの作用には重複もあることから,まだミオカインの役割については解明すべき点が少なくない.しかしミオカインが,運動や身体活動が健康や疾病あるいはさまざまな臓器に及ぼす効果の,一翼を担っていることは間違いない.
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東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野/医学系研究科運動学分野
日呼吸誌, 4(1): 41-46, 2015