高分子insulin-like growth factor-II産生が確認された臓側胸膜由来の孤立性線維性腫瘍の1切除例
髙橋 深雪a,b 遠藤 俊輔b 野口 仁麗c 長坂昌一郎c 石橋 俊c 山口 岳彦d
a自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座
b同 外科学講座呼吸器外科部門
c同 内科学講座内分泌代謝学部門
d同 病理診断部
症例は75歳,男性.低血糖発作の精査加療目的で入院した.血中インスリン分泌は抑制されており,非膵島細胞腫瘍性低血糖症が疑われた.胸部X線とCT検査で左胸腔内に長径20 cm大の腫瘤性病変を認めた.経皮針生検で孤立性線維性腫瘍と診断し,左開胸手術を施行した.腫瘍は左下葉の臓側胸膜から有茎性に進展しており,左下葉の一部を含めて摘出した.手術時間は209分,出血量220 mlであった.免疫染色の結果insulin-like growth factor(IGF)-II産生の悪性孤立性線維性腫瘍と診断した.血清IGF-IIのウエスタンブロッティング解析では,術前には高分子IGF-IIを認め,術後には消失していた.術直後から低血糖症状は消失し術後3年6ヶ月,再発徴候は認めていない.
孤立性線維性腫瘍(孤在性線維性腫瘍) 胸膜 非膵島細胞腫瘍性低血糖症 外科治療 高分子IGF-II
Received 10 Dec 2013 / Accepted 19 Jun 2014
連絡先:遠藤 俊輔
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座
日呼吸誌, 3(5): 680-684, 2014