長期にわたる副鼻腔気管支症候群の経過観察中に,MPO-ANCA関連血管炎を合併した1例
磯部 全a,b 佐々木信一c 吉岡 泰子c 富永 滋c 折居 美波b 前野 敏孝b
a医療法人磯部クリニック
b群馬大学医学部附属病院呼吸器アレルギー内科
c順天堂大学医学部附属浦安病院呼吸器内科
症例は56歳,女性.46歳時に副鼻腔気管支症候群と診断された.2005年2月頃から両側下肢筋力低下,両側上下肢のしびれが出現した.4月初旬頃から症状は徐々に増悪し,労作時呼吸困難も出現したため,4月中旬に精査目的にて入院となった.入院時39℃台の発熱を認め,MPO-ANCA 28 EU,BPI-ANCA 106 EUと高値であった.湿性咳嗽,低酸素血症,寒冷凝集素の上昇も認められ,胸部CTではびまん性小葉中心性粒状影を呈していたことから,臨床的にびまん性汎細気管支炎と考えられた.また入院第19病日に突然右眼の視力障害を認め,眼底に虚血を示唆する白斑の多発を認めた.特に筋力低下が認められた左大腿四頭筋より筋生検を行った結果,筋肉の萎縮と細小静脈,細小動脈周囲にリンパ球中心の細胞浸潤と血管壁のフィブリノイド変性を認め,壊死性血管炎の存在が示唆された.以上よりMPO-ANCA関連血管炎と診断し,ステロイド治療を開始した.本例は長期にわたる副鼻腔気管支症候群の経過観察中にMPO-ANCA関連血管炎を合併した症例と考えられた.
副鼻腔気管支症候群 びまん性汎細気管支炎 MPO-ANCA関連血管炎 BPI-ANCA
Received 20 Aug 2013 / Accepted 12 Nov 2013
連絡先:磯部 全
〒366-0016 埼玉県深谷市新井926
医療法人磯部クリニック
日呼吸誌, 3(2): 270-275, 2014