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病 態
―重症化に関してどこまで病態は理解されているか―
琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第1内科)
肺炎は実地臨床でよく遭遇するcommon disease の一つであると同時に,患者の臨床背景,起炎微生物の病原性や治療抵抗性により,きわめて多様な病態を呈する.肺炎は時に致命的な状態に陥る可能性がある.重症肺炎は臓器障害あるいは重症敗血症を伴う肺炎ということができる.重症市中肺炎では肺炎球菌,インフルエンザウイルス,Legionella,複数菌感染などがみられ,なかでも緑膿菌の頻度が高くなる.感染に伴い,白血球活性化,補体活性化,凝固系の活性化を誘導され,炎症が惹起される.肺局所における過剰な炎症反応と好中球および血小板の異常集積は,凝固系異常,肺胞上皮障害,肺毛細血管内皮障害をもたらす.傷害を受けた細胞から遊離するhigh-mobility group box 1蛋白なども重症敗血症および急性肺障害の病態に関与している.薬剤耐性は初期治療の失敗を招き重症化の要因となる可能性がある.重症肺炎に対する臨床的な対応策の確立が今後の課題である.
連絡先:比嘉 太
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琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第1内科)
日呼吸誌, 2(6): 688-694, 2013