第一選択薬ゲフィチニブが奏効したTrousseau症候群を合併した肺腺癌の1例
木下ありさa 坂本 晋a 鈴木亜衣香a 石田 文昭a 仲村 敬和b 本間 栄a
a東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森)
b同 神経内科学分野(大森)
症例は57歳,男性.2010年4月咳嗽,血痰を主訴に来院.精査の結果,原発性肺腺癌(cT4N3M1b)EGFR遺伝子変異陽性と診断.第一選択薬としてゲフィチニブ投与開始.しかし,同日より巧緻運動障害を認めた.採血上,凝固線溶系の亢進,頭部MRIで多発性脳梗塞を認め,肺腺癌によるTrousseau症候群に伴う脳梗塞と診断.経過とともに腫瘍の縮小のみならず凝固線溶系と神経症状の改善を認めた.Trousseau症候群の機能・生命予後は不良とされゲフィチニブにより軽快しえた症例はこれまでになく,貴重な症例と考え報告する.
Received 27 Nov 2012 / Accepted 10 Apr 2013
連絡先:木下 ありさ
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1
東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科学分野(大森)
日呼吸誌, 2(5): 556-561, 2013