膵性胸水を伴う縦隔内膵仮性嚢胞の2例
伊藤 隼 川口祐貴子 伊藤 貴康 高木 達矢 福島 曜 松本 政実
一宮市立市民病院
症例1は40歳代,男性,症例2は60歳代,男性.ともに主訴は呼吸困難でアルコール性慢性膵炎の既往があり,胸水貯留と食道裂孔を介して縦隔に進展した膵仮性嚢胞を認めた.胸水は黒色血性で胸水中amylaseは著増しており,膵仮性嚢胞の胸腔内穿破と考えられた.症例1では胸腔ドレナージ・膵炎治療では改善なく,内視鏡的経乳頭的ドレナージ,ソマトスタチン誘導体も併用した.症例2では胸腔ドレナージと膵炎治療が行われた.2例とも改善を認め,本疾患の治療の主体は膵液ドレナージと膵液産生の抑制であると考えられた.縦隔内膵仮性嚢胞による膵性胸水の報告は散見されるが,実際に遭遇することはまれであり,胸水貯留,特に黒色胸水の鑑別として本疾患があることに留意されたい.
Received 12 Dec 2012 / Accepted 18 Mar 2013
連絡先:松本 政実
〒491-8558 愛知県一宮市文京2-2-22
一宮市立市民病院
日呼吸誌, 2(4): 471-475, 2013