
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍および悪性腫瘍との鑑別を要した巨大腫瘤性肺放線菌症の小児発症例
坂本安見子a 小嶋 圭介a 一安 秀範a 佐藤奈穂子a 岡本真一郎a 阿南 正b 小橋陽一郎c 猪山 賢一d 興梠 博次a
a熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
b同 小児科
c天理よろづ相談所病院医学研究所病理
d熊本大学医学部附属病院病理部
症例は14歳女児.背部痛,発熱,体重減少を主訴に近医を受診.血液検査にて炎症反応の上昇を認め,熊本大学医学部附属病院小児科に紹介されたが,胸部CTにて右肺野に巨大腫瘤性病変とその周囲に散在性結節影が認められたために,呼吸器内科に転科となった.腫瘤は肺内から背部筋組織へ連続性に広がり縱隔にも浸潤していたため,悪性腫瘍あるいは炎症性偽腫瘍を疑いCTガイド下生検を施行した.病理組織像は急性~慢性の炎症細胞浸潤を主体とし,硫黄顆粒を認め放線菌症が疑われたが,α平滑筋アクチン陽性の紡錘形細胞の増生を認め,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍も鑑別から除外できなかった.ただし,小児の炎症性筋線維芽細胞性腫瘍に発現しやすいALK-1は陰性であった.診断的治療として抗菌薬投与を開始し,浸潤影は徐々に改善した.以上の臨床経過から肺放線菌症と診断した.肺放線菌症は診断に苦慮する感染症の一つで小児では頻度が少ないため,小児例で炎症を伴いながら一般細菌培養検査で診断に至らない肺腫瘤性病変では,放線菌症を鑑別する必要がある.
Received 1 May 2012 / Accepted 7 Aug 2012
連絡先:興梠 博次
〒860-8556 熊本市中央区本荘1-1-1
熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 2(3): 205-210, 2013