トシリズマブ使用中にニューモシスチス肺炎とクリプトコッカス症を発症した関節リウマチの1例
辻 泰佑a 新井 徹a,b 庄田 武司a 審良 正則c 北市 正則d 井上 義一b
a独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科
b同 臨床研究センター
c同 放射線科
d同 病理
症例は79歳,女性.関節リウマチに対して,NHO近畿中央胸部疾患センター初診11ヶ月前よりトシリズマブとメトトレキサート,プレドニゾロンによる治療中であった.10回目のトシリズマブ投与後に倦怠感と呼吸困難が出現した.胸部CTでは,両肺びまん性のすりガラス様陰影と右下葉の癒合傾向のある結節影が出現し,気管支洗浄液でPneumocystis jirovecii DNA PCR陽性,血清Cryptococcus neoformans抗原陽性を示し,ニューモシスチス肺炎とクリプトコッカス症と診断.トシリズマブのためCRP上昇は軽度であり,メトトレキサートによる血球減少も加わり,感染徴候はマスクされていた.トシリズマブ,メトトレキサート中止,ステロイド増量,スルファメトキサゾール・トリメトプリムおよび抗真菌薬投与により,治療開始1ヶ月後に一時的にCRP上昇を認めたが治療を変更することなく継続し,その後CRP低下,陰影の改善を認めた.
トシリズマブ メトトレキサート ニューモシスチス肺炎 クリプトコッカス症 関節リウマチ
Received 20 Feb 2012 / Accepted 10 Aug 2012
連絡先:井上 義一
〒591-8555 大阪府堺市北区長曽根町1180
独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科
日呼吸誌, 2(2): 114-118, 2013