Cryptococcusにより膿気胸を起こしたと考えられる1例
山口 航a 小嶋 徹a 中屋 順哉a 森谷 梨加a 高崎 俊和a 高瀬恵一郎b
a福井県立病院呼吸器内科
b福井県こども療育センター
症例は76歳,女性.2007年10月に意識障害で福井県立病院に救急搬送され,胸部単純X線写真,胸部単純CTで左肺の虚脱と浸潤陰影,空洞形成を認め,左気胸と両側胸水貯留を認めた.PaCO2 112.8 Torrと高二酸化炭素血症を認めたことから,当初,気胸によるCO2ナルコーシスと考え,non-invasive positive pressure ventilation(NPPV)と胸腔ドレナージによる加療を開始し意識状態の改善を得た.その後,胸水培養でCryptococcus neoformansが検出され,胸水中のC. neoformans抗原も陽性であり,胸水中の病理細胞診でもCryptococcusの菌体を認めた.以上から,肺クリプトコッカス症が胸腔穿破して生じた可能性が高い,膿気胸であると診断した.抗真菌薬で加療を開始したところ,炎症反応の改善を認めた.気胸についてはピシバニール®(Picibanil®)で胸膜癒着療法を実施し,気漏の消失を認め胸腔ドレーン抜去に成功した.退院後も夜間のみNPPVを使用していたが臨床症状は安定しており,約5ヶ月の抗真菌薬投与を経て加療を終了とした.その後,再発は認めなかったが退院1年後に,自宅にて心肺停止状態で発見され死亡が確認された.Cryptococcusによる膿気胸というまれな病態に対して,抗真菌薬と胸腔ドレナージ,胸膜癒着療法が有用であったと考えられた.
Received 23 Jan 2012 / Accepted 24 Apr 2012
連絡先:山口 航
〒910-0846 福井市四ッ井2-8-1
福井県立病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(7): 578-583, 2012