心筋転移をきたした肺原発多形癌の1例
狩野 芙美a 津端由佳里a 神田 響a 須谷 顕尚a 久良木隆繁a 荒木亜寿香b 礒部 威a
a島根大学医学部内科学講座がん化学療法学
b同 器官病理学講座
症例は78歳女性.乾性咳嗽,顔面浮腫,呼吸困難を主訴に当科を受診.胸部CT画像で右肺上葉に上大静脈を狭窄する径6 cm大の腫瘍を認め,肺癌および上大静脈症候群の疑いで入院した.気管支鏡検査およびCTガイド下肺生検にて,少量の異型を伴った肺胞上皮を認め,悪性が示唆されたが病理学的な確定診断は得られなかった.急速な腫瘍の増大,胸水,心嚢水の増加を認め,循環動態の悪化をきたし,入院約1ヶ月後に死亡した.剖検にて肺原発多形癌と診断した.対側肺,肝臓,心筋に転移を認めたが,多形癌の心筋転移の報告はまれである.悪性度の高い多型癌では,本症例のように心筋への転移をきたす可能性もあり注意が必要である.
Received 16 Dec 2011 / Accepted 14 May 2012
連絡先:狩野 芙美
〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1
島根大学医学部内科学講座がん化学療法学
日呼吸誌, 1(7): 573-577, 2012