同種造血幹細胞移植後に発症した上葉優位型肺線維症の2例
自治医科大学呼吸器内科
今回,同種造血幹細胞移植の既往歴を有する2例の上葉優位型肺線維症を経験した.2例は家族歴のない,やせ型で扁平胸郭の女性であった.上葉優位型肺線維症はいずれも移植後7年以上の経過で診断され,その後も病変は悪化進行した.上葉を主体とする原因不明の肺線維症は,現時点では特発性間質性肺炎の分類に含まれないまれな肺線維症であり,その予後は不良なことが多い.一方,造血幹細胞移植後晩期の非感染性呼吸器合併症として,これまでに閉塞性細気管支炎が報告されているが,上葉優位型肺線維症の報告はほとんどない.造血幹細胞移植と本症発症の関連性については不明であるが,今後も類似症例の報告の蓄積が重要であると思われる.
造血幹細胞移植 造血幹細胞移植後呼吸器合併症 上葉優位型肺線維症
Received 2 Dec 2011 / Accepted 24 Apr 2012
連絡先:中曽根 悦子
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自治医科大学呼吸器内科
日呼吸誌, 1(7): 562-566, 2012