多発性骨髄腫に合併したびまん性肺胞隔壁型アミロイドーシスの1例
山川 英晃a 高柳 昇a 石黒 卓a 清水 禎彦b 柳澤 勉a 杉田 裕a
a埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
b同 病理診断科
症例は71歳,女性.2007年6月に他院で多発性骨髄腫(IgG λ型)と診断され無治療で経過観察されていた.2008年12月から咳嗽が出現し,2010年9月から労作時の咳嗽,呼吸困難および血痰(3ヶ月に1回程度)を自覚し,2011年4月に当センターを受診した.胸部HRCT検査で小葉間隔壁の肥厚,広範なすりガラス影を認めた.入院時の気管支肺胞洗浄検査で広範なすりガラス影は肺胞出血と診断した.肺胞出血改善後の経気管支肺生検で,びまん性肺胞隔壁型アミロイドーシスと診断した.直腸粘膜組織でアミロイド蛋白の沈着を認め,心臓超音波・カテーテル・造影MRI検査から心アミロイドーシスも示唆された.その後は利尿薬の投与と全身化学療法が開始され,症状および肺野の病変,心機能は悪化なく外来で経過観察中である.びまん性肺胞隔壁型アミロイドーシスは呼吸器症状が乏しく生前診断例は少ないが,本症例のように多発性骨髄腫患者に呼吸器症状が出現したときは,肺胞出血や,肺および心アミロイドーシスの合併を常に考える必要がある.
びまん性肺胞隔壁型アミロイドーシス 多発性骨髄腫 アミロイドーシス 肺
Received 9 Apr 2012 / Accepted 18 Jun 2012
連絡先:山川 英晃
〒360-0105 埼玉県熊谷市板井1696
埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
日呼吸誌, 2(1): 68-72, 2013