原発性線毛不全症候群に合併したNocardia asiaticaによる肺ノカルジア症の1例
田中 徹 角田 義弥 林 士元 谷田貝洋平 関根 朗雅 斎藤 武文
国立病院機構茨城東病院内科診療部呼吸器内科
症例は47歳男性.湿性咳嗽および胸部異常陰影を認め茨城東病院紹介受診となる.気管支洗浄液からNocardia属が培養され,胸部画像を含めた臨床所見と合わせ肺ノカルジア症と診断し,スルファメトキサゾール・トリメトプリム(sulfamethoxazole-trimethoprim)合剤の投与を開始し,軽快した.その後16S rRNA遺伝子解析によりNocardia asiaticaと同定された.精子の運動不全による男性不妊や反復する中耳炎・気管支肺炎の既往があったことから基礎疾患として原発性線毛不全症候群(primary ciliary dyskinesia:PCD)の存在が疑われ,気道粘膜生検組織の電子顕微鏡検査を施行し,PCDの診断に至った.全身性免疫正常者に肺ノカルジア症が発症した場合,気道粘液線毛輸送系障害による気道局所自浄機能低下の可能性があり,鑑別診断としてPCDを考慮すべきである.また日和見感染症として発症する肺ノカルジア症と異なり,全身性免疫健常者に発症する肺ノカルジア症は良好な予後を示す可能性がある.
原発性線毛不全症候群 肺ノカルジア症 Nocardia asiatica 粘液線毛輸送系
Received 9 Nov 2011 / Accepted 28 Feb 2012
連絡先:田中 徹
〒319-1113 茨城県那珂郡東海村照沼825
国立病院機構茨城東病院内科診療部呼吸器内科
日呼吸誌, 1(6): 492-497, 2012