小空洞に増大する菌球を胸腔鏡下部分肺切除で診断しえた肺アクチノマイコーシスの1例
肥留川一郎a 皿谷 健a 田中 良太b 藤原 正親c 石井 晴之a 後藤 元a
a杏林大学医学部付属病院呼吸器内科
b同 呼吸器外科
c同 病理学教室
症例は43歳男性,数週間前から発熱,左側胸部痛,咳嗽,血痰を自覚し杏林大学医学部付属病院初診.胸部X線および胸部CTにて左上肺野に空洞を伴う浸潤影を認め,肺膿瘍の診断となった.外来にて4週間の抗菌薬(アモキシシリン/クラブラン酸,1,500 mg/日)投与を行い,症状および胸部X線上の陰影はほぼ消失し治療を終了した.治療終了1ヶ月後に症状が再燃した.初期治療終了5ヶ月後の胸部CTで左S1+2に残存する空洞性病変と内部に新たに2 mm大の小結節影を認めた.肺膿瘍の再燃と診断し,4ヶ月間の同治療を再開したが症状は持続した.さらに,空洞内の菌球様結節は徐々に増大した.最初の治療開始から9ヶ月後に胸腔鏡下で左上葉部分切除術を施行した.摘出肺では15 mm大の空洞を認め,さらに空洞内にはドルーゼを伴っていた.以上より肺アクチノマイコーシスの診断となった.小空洞内に菌球様結節を呈した肺アクチノマイコーシスの報告は現在まで2例のみである.さらに小空洞内の菌球形成を継時的に胸部CTで確認し,胸腔鏡下手術で菌塊と空洞壁の特徴的な病理学的所見を確認しえた初めての症例である.
Received 10 Aug 2011 / Accepted 6 Mar 2012
連絡先:肥留川 一郎
〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(6): 464-469, 2012