腹膜癌治療後に発症したpulmonary tumor thrombotic microangiopathyの1剖検例
吉井 悠a 清水健一郎a 渡辺 翔a 高木 正道a 富永 光敏b 桑野 和善c
a東京慈恵会医科大学附属第三病院呼吸器内科
b同 循環器内科
c東京慈恵会医科大学附属病院呼吸器内科
症例は56歳女性.2008年(54歳時)に原発性腹膜癌の診断で手術および化学療法を施行し,以後再発なく経過していた.2010年6月に呼吸困難を主訴に東京慈恵会医科大学附属柏病院受診し,急性呼吸不全のため緊急入院となった.心臓超音波検査にて推定右室収縮期圧72 mmHgと著明な肺高血圧を認めた.胸部造影CTでは塞栓所見は認めず,特発性肺動脈性肺高血圧症が疑われPGI2誘導体療法,抗凝固療法を施行した.しかし急速に呼吸不全が進行し,入院後48時間で死亡した.肺病理組織学的所見では,びまん性に肺最少動脈内に多発微小腫瘍塞栓を認め,膠原線維増生による内膜の肥厚を認めた.腫瘍細胞は腹膜癌手術検体と同一の漿液性腺癌であり,腹膜癌再発によるpulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)と診断した.原発性腹膜癌によるPTTMは過去に報告がなく非常にまれであり,文献的考察を加え報告する.
Received 24 Nov 2011 / Accepted 1 Feb 2012
連絡先:吉井 悠
〒201-8601 東京都狛江市和泉本町4-11-1
東京慈恵会医科大学附属第三病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(5): 445-449, 2012