関連痛としての肩痛を主訴とした肺癌の2例
井部 達也a 森田あかねb 濵元陽一郎a 福住 宗久a 毛利 篤人a 上村 光弘a
a国立病院機構東京災害医療センター
b聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
我々は,肺癌が横隔膜浸潤したことによる関連痛として片側性の肩痛を自覚した2例を経験したので,報告する.症例1は66歳男性.左の片側性の肩痛を3ヶ月前より自覚しており胸部X線にて左下肺に腫瘤を認めた.肺扁平上皮癌と診断され,横隔膜浸潤を認めた.症例2は55歳女性.2週間継続する咳嗽にて受診したが,その際に右の片側性の肩痛を認めていた.胸部X線にて右下葉に腫瘤を認めCTにて横隔膜に浸潤しているのが認められ,肺癌と診断した.どちらの症例でも化学療法は奏効せず,腫瘍の増大に伴って肩痛も増悪を認めた.横隔膜病変で生じる関連痛としての肩痛の機序は横隔膜の知覚を支配する横隔神経が肩領域の知覚を支配するC3~C5を共有することによると考えられている.片側性の肩痛を認めた場合に,整形外科的な疾患がなければ横隔膜病変を考慮する必要もあると考えられる.
Received 26 Oct 2011 / Accepted 7 Feb 2012
連絡先:井部 達也
〒190-0014 東京都立川市緑町3256
国立病院機構東京災害医療センター
日呼吸誌, 1(5): 408-413, 2012