肺癌に伴う上大静脈症候群に対する血管内ステント留置15症例の有効性と安全性
佐藤奈穂子a 向笠 洋介a 増永 愛子a 佐伯 祥a 一安 秀範a 佐々木治一郎a 藤井 一彦a 池田 理b 山下 康行b 興梠 博次a
a熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
b同 画像診断・治療科
上大静脈症候群は,主に悪性腫瘍,特に肺癌や縱隔リンパ節転移により上大静脈の血流が制限されることにより起こる病態で,顔面の浮腫や気道狭窄症状等を呈し,患者のquality of lifeを著しく低下させる.近年,上大静脈症候群に対する血管内ステント留置術の有効性が報告されている.今回,熊本大学医学部附属病院において肺癌に伴う上大静脈症候群に対して血管内ステント留置術を施行した15例(全例男性,平均年齢64.9歳)について後ろ向きに検討した.全例でステント留置後24時間以内に血流の改善が得られ,14例で症状の消失や改善が得られた.重篤な合併症はなかった.ステント留置後,10例では肺癌に対する抗癌治療が早期に開始可能となり,ステント留置後の生存期間は88~628日(中央値363日)であった.上大静脈症候群に対する血管内ステント留置術は,原疾患の治療コンプライアンスを向上させ生命予後を延長させるチャンスを与える可能性がある.
非小細胞肺癌 小細胞肺癌 上大静脈症候群 血管内ステント オンコロジー・エマージェンシー
Received 22 Aug 2011 / Accepted 31 Jan 2012
連絡先:興梠 博次
〒860-8556 熊本市本荘1-1-1
熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(5): 374-380, 2012