イカの顎板を誤嚥し発症した肺放線菌症の1例
松沼 亮 牧野 英記 中島 啓 浅井 信博 金子 教宏 青島 正大
亀田総合病院呼吸器内科
症例は63歳,男性.職場の健康診断で胸部腫瘤陰影を指摘され,肺癌の疑いで当院を紹介受診した.来院時の胸部単純X線写真で右下肺野に辺縁比較的整の小結節影あり,胸部造影CTで右S6に周囲にすりガラス陰影を伴う19×20 mmの結節影がみられ,気管支鏡検査を行った.右底幹を占拠する板状の白色の物質が存在し,粘膜潰瘍がみられた.右B6の粘膜より経気管支生検を行った.病理学的検査で硫黄顆粒がみられたため肺放線菌症と診断した.白色の異物はイカの顎板であると判明した.その後の問診でいかとんび(イカの顎板)を食べたことがあることが判明し,イカの顎板の誤嚥による肺放線菌症と診断した.アモキシシリン(amoxicillin)750 mgを投与し右肺の陰影は消失した.誤嚥のリスクのある患者の胸部腫瘤陰影は異物による放線菌症の可能性もあり,鑑別疾患の一つとして検査を進めていくことが望まれる.
Received 1 Aug 2011 / Accepted 8 Dec 2011
連絡先:松沼 亮
〒296-8602 千葉県鴨川市東町929
亀田総合病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(3): 242-246, 2012