癌性腹膜炎を合併した原発性肺癌の2例
黄 英文a 佐山 宏一b 清水健一郎a 須藤 晃彦a 千代谷 厚a 田島 敦志c 向井万起男d
a済生会宇都宮病院呼吸器内科
b慶應義塾大学医学部呼吸器内科
c済生会宇都宮病院呼吸器外科
d慶應義塾大学医学部病理診断部
症例1は70歳,女性.肺癌(腺癌,cT4N2M1,stage IV)の診断のもと化学療法を施行されたが治療効果は乏しく,新たに腹水が出現し癌性腹膜炎と診断された.performance status 3であったが,ゲフィチニブ(gefitinib)を投与開始したところ,腹水は著明に減少し9ヶ月間外来での治療が可能であった.症例2は55歳,女性.肺癌(腺癌,cT4N0M0,stage IIIB)と診断された後,セカンドラインまで化学療法が行われたが,癌性腹膜炎と下肢深部静脈血栓症を併発し緊急入院.下大静脈フィルターを挿入した後gefitinibを試みたが,腹水のコントロールは困難を極め2ヶ月後に原病死した.原発性肺癌に癌性腹膜炎を合併することは少ないが,合併した場合の平均余命は2ヶ月と著しく悪い.さらに全身状態不良のため化学療法を選択できないことが多く,報告例はまれである.今回我々は,癌性腹膜炎を合併した原発性肺癌の2例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
Received 28 Jun 2011 / Accepted 14 Nov 2011
連絡先:黄 英文
〒321-0974 栃木県宇都宮市竹林町911-1
済生会宇都宮病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(3): 219-224, 2012