小腸転移による消化管穿孔をきたした肺癌の3症例
扇野 圭子a,b 寺嶋 毅b 松崎 達b 藤原 宏b 小川 里佳b 内藤明日香b 森下 鉄夫b 別役 智子a
a慶應義塾大学病院呼吸器内科
b東京歯科大学市川総合病院内科
症例1は56歳男性.肺扁平上皮癌T4N2M0 Stage IIIB.放射線治療開始後,下腹部痛が出現しCTにて消化管穿孔と診断した.保存的治療で改善したが原病の進行にて穿孔後50日目に死亡.剖検にて小腸穿孔癒着後の所見を確認した.症例2は64歳男性.肺多形癌T4N1M1 Stage IV.化学療法を行ったが原病悪化にて対症療法となった.食後腹痛が出現しCTにて消化管穿孔と診断,画像にて指摘されていた小腸転移部の穿孔と診断した.保存的に経過をみたが原病の進行にて穿孔後70日目に死亡した.症例3は87歳男性.肺大細胞癌T2N0M0 Stage IB.食後の腹痛にてCT施行し消化管穿孔と診断,緊急開腹手術にて肺癌小腸転移の穿孔であり,全身状態の回復なく術後18日目に死亡した.肺癌の小腸転移はまれであるが,肺癌患者において突然の腹痛を認めたときは小腸転移の穿孔の可能性も念頭に置く必要がある.
Received 28 Jul 2011 / Accepted 4 Nov 2011
連絡先:扇野 圭子
〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
慶應義塾大学病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(2): 157-161, 2012