イソシアネートによる過敏性肺炎と気管支喘息発作を併発した1例
金沢大学附属病院呼吸器内科
症例は61歳男性で,イソシアネートによる過敏性肺炎と喘息症状の合併を認めた.家具製造工場に勤務し,イソシアネートを含有したポリウレタン接着剤を使用していたが,職場で増悪する発熱,咳嗽,喘鳴,呼吸困難の精査と治療のために入院となった.胸部CT上,びまん性小葉中心性粒状陰影を認め,気管支肺胞洗浄液細胞分画は過敏性肺炎に矛盾しない所見であった.イソシアネートに対する特異的IgE抗体は陽性であった.また,気道可逆性試験は陽性で気道過敏性も亢進しており,気管支喘息と診断した.呼気中一酸化窒素(FeNO)濃度の上昇も気管支喘息の診断根拠となった.職場での環境曝露試験では,咳嗽,息切れ,胸部絞扼感が出現し,体温の上昇,白血球数の増加とCRPの上昇,ピークフローとSpO2の低下を認めた.以上から,過敏性肺炎,気管支喘息ともに誘発試験陽性と判断した.環境曝露試験でFeNO濃度の低下を認めた点は興味深い所見であった.
過敏性肺炎 気管支喘息 イソシアネート 環境曝露試験 呼気中一酸化窒素
Received 18 Mar 2011 / Accepted 20 Oct 2011
連絡先:酒井 珠美
〒920-8641 石川県金沢市宝町13-1
金沢大学附属病院呼吸器内科
日呼吸誌, 1(2): 114-118, 2012