出血性胃潰瘍を合併し,貧血の鑑別に苦慮した特発性血小板減少性紫斑病合併肺癌の1例
安藤 克利 吉見 格 十合 晋作 関谷 充晃 瀬山 邦明 高橋 和久
順天堂大学医学部呼吸器内科
症例は69歳男性.2010年6月より右上葉肺腺癌cT4N2M0 stage IIIBに対して化学療法と逐次的に放射線療法を施行.2011年2月に再発し,erlotinibを開始したところ,貧血,血小板減少をきたした.精査にて,特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP),出血性胃潰瘍と診断.ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori:HP)感染が確認されたため,除菌療法を行った.免疫性血小板減少症(ITPもしくは腫瘍随伴症状)合併非切除肺癌は,自験例を含め11例の報告があり,うち胃潰瘍を併発した症例は2例のみであるものの,これらを併発した場合には,骨髄抑制や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)など原因の鑑別に苦慮する.近年,ITPとHP菌感染の関連が報告され,また同時にHP感染は消化器病変の原因となることから,ITP合併肺癌を経験した際には,HP感染の有無に加え,消化器疾患併発の可能性にも注意が必要であると考えられた.
Received 7 Jun 2011 / Accepted 15 Sep 2011
連絡先:安藤 克利
〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1
順天堂大学医学部呼吸器内科
日呼吸誌, 1(1): 51-55, 2012